この記事は、デジタルマーケティングについてこれから学びたい方や、ビジネスでデジタルを活用していきたい方のために書きました。
デジタルマーケティングというと何だか難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うとWebサイトやSNS、メール、ネット広告などを使って集客、売上増の施策を仕組化することです。
既にこれらのツールを使っている企業は多いのではないでしょうか。
もし有効に使えていないのであれば、それは何故でしょうか。
ツールが高度化し情報が溢れているからこそ、重要なのは「ヒトを理解すること」です。
道具は慣れれば誰でも使えるもの。
しかし重要なのは、その道具をどんなコンセプトのもとに、どう活用していくかです。
この記事が、あなたのデジタルマーケティングのヒントに繋がれば幸いです。
カスタマーエクスペリエンス
マーケティング領域では今や「石を投げれば当たる言葉」、それがカスタマーエクスペリエンスです。Customer ExperienceでCXと略されます。
直訳すると「顧客体験」ですが、「顧客経験価値」などとも言われます。
CXに関して有名なバーンド・H・シュミット教授という方が、CXの定義についてインタビューの中でこのように答えています。
私の研究における顧客体験の定義は、特定のブランドに関連する刺激によって引き起こされる感情、思考、行動であるというものです。
courseraより
つまり、メッセージやロゴ、商品自体やWebコンテンツなど企業側が提供するあらゆるものに触れたときに生じる顧客の感情や思考、そこからの行動も含めてCXとしています。
優れたCXを提供しているサイトの一つが、「北欧、くらしの道具店」です。
このサイトでは、北欧などの国で作られた雑貨やオリジナル商品などを販売しています。
そしてサイト内にあるのは単なる商品ページだけではありません。
生活のふとしたシーンの中に商品をそっと登場させるような記事や、料理のレシピの中に商品を織り交ぜる記事など、商品の周りに多くのストーリーが添えられています。
また商品ページ自体も、商品の細かな説明や利用シーンの提案など、まるで商品を手に取って見ているかのように(もしかするとそれ以上に)商品の魅力が伝わってきます。
そんな「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムでは、サイトをこのように定義しています。
「ある分野に専門特化した新しい形の出版社である」
単なる陳列棚としてのネットショップではなく、出版社のようにサイト内にストーリーを織り交ぜることで、訪問者に「共感」や「憧れ」といった感情の揺さぶりが生じ、優れたCXに繋げています。
では、CXを高めるためにはどうしたらいいのでしょうか。
ポイントはたくさんありますが、その1つに顧客層に応じたアプローチを行うことが挙げられます。
顧客は、下のようなピラミッドで表されます。
ビジネスにおける目標は、下層の顧客を上の層へ引き上げていくことです。
顧客層によって商品・サービスへの認知度・愛着度は違うため、その違いを考慮したアプローチが必要になります。
下図は顧客層に合わせた施策の例です。ケースに合わせて色々な方法が考えられます。
ここで重要なことは、各顧客層にはどんな特徴(感情を含む)があり、顧客層毎にどんな情報を届けたら喜んでもらえるかを考えることです。
上図では、左から右へと顧客の段階を上げていきたいわけですが、大まかな流れは、「まずは商品・サービスを知ってもらう。そこから関係を深めていく。」ということです。
CXを考えるときには、最終ゴールを決めておく必要があります。最終ゴールとは、「顧客を導く最終地点がどこで、そこでどんな行動をしてもらうのか」です。
たとえばネットショップであれば、最終ゴールは「商品ページに進んで購入ボタンを押してもらうこと」でしょうし、企業向け製品を扱っていれば「入力フォームに情報を入力して資料請求のボタンを押してもらうこと」も一つでしょう。
ゴールが決まれば、顧客とゴールの間をどう繋いでいくかを考えます。
上図の①の場合、SNSや広告から直接商品ページへ誘導し、購入してもらうパターンです。
商品ページには商品の仕様や価格を載せるだけでなく、ページの中にちょっとしたストーリー(使用場面を提示するなど)を加えることも出来るでしょう。
また②は、まずSNS・広告からターゲット層が興味がある記事などに誘導し、そこから商品ページへの遷移、購入に繋げるパターンです。
1回のアプローチで購入してもらうだけでなく、記事や動画を定期的に繰り返し見てもらうことでブランドの世界観に引き込んで後々購入してもらうといった導き方もあります。
繰り返しになりますが、重要なことはあなたがターゲットとする顧客がどんな人たちで、どんなことを届けたら喜んでもらえるのかを考えることです。
上図は顧客の流れを抽象化したものですが、顧客とゴールまでの過程を時系列でより具体的に描いたものをカスタマージャーニーといいます。
簡単に言うと、「顧客を起点として、ゴールに向けてCXをどう順序立て組み立てていくか」というものです。
カスタマージャーニーについては、こちらのサイトをご覧ください。
Marketo Engateサイト:カスタマージャーニーとは
顧客の動きはケースバイケース
顧客の購買行動の流れについては、下記のようなものや様々なモデルが提唱されてきました。
「購買行動モデル」で検索すると、たくさんの略語が出てきます。
しかし、顧客の年齢層や商品・サービスの特徴によって購入するまでの時間軸や経路も違ってきます。
モデルを念頭に置くことも大切ですが、モデルありきではなくあなたの顧客がどんな行動をするのかイメージ(推測)し、実際の行動を把握(計測)しようとすることが最も重要です。
2020年1月にはGoogleが7221人のデータを分析した結果から、購買までに至る人の情報探索行動は1本道ではないという「バタフライ・サーキット」というものを提唱しています。
デジタルの良さは、人の流れをデータとして客観的に見られることです。そのための無料ツールもたくさんあります。
絶対的な正解が誰にもわからないからこそ、ある施策をしたらデータで検証し、トライアンドエラーを繰り返しながら「CXを高めるために少しでも良い方法を見つけようとすること」が重要と言えます。
具体的な施策などについては、今後のコンテンツでお届けしていきます。
ブランド認知
2020年8月現在、Webサイトだけでも世界中には18億近くあり、20年前と比べると100倍以上に増えておりWeb上は膨大な数のコンテンツで溢れかえっています(Internet Live Statsより)。
そして顧客の手元にはスマホがあり、あらゆるコンテンツに片手でアクセスできます。
日本人のスマホの平均利用時間は2~3時間と言われていますが、その間、ユーザーにはたくさんの選択肢があるわけです。
こういった中で存在を際立たせてくれるもの。
それが、ブランド力です。
何か必要なものがあった時に浮かぶいくつかの選択肢のことを「想起集合」と言いますが、その中でも最初に浮かぶものを「第一位選択」と言います。
ブランディングの目的は、この第一位選択のポジションを獲得することです。
ではそもそも “ブランド”とは何なのでしょうか。
国際標準化機構とアメリカマーケティング協会の定義からざっくりまとめると、ブランドとは
「商品やサービス、企業の名前やデザイン、機能などの目に見えるものだけでなく、消費者が受ける印象まで含めたもの」
といったところになります。
では、“良いブランド認知”を得るためには何が重要でしょうか。
それは、一貫性です。
例えば、ナチュラル系の服を扱っているブランドが、カラフルでポップなイラストをWebサイト上で使っていたら、あなたはどんな印象を受けるでしょうか。
いざナチュラル系の服を欲しくなった時に、そのブランドのことを思い出すでしょうか。
おそらく思い出す可能性は低いでしょう。
ハーバード大学のジェラルド・ザルトマン教授は、人が購入する際の意思決定の95%は潜在意識によると述べています。
これはつまり、ブランド側は顧客の潜在意識に残るような一貫性のあるメッセージを発信し続けることが重要ということです。
それによって、顧客の頭の中では「○○といったらあのブランド」というようにブランドがタグ付けされやすくなります。
また、ブランディングに一貫性を持たせることで、収益が33%増加するというデータもあります。
一貫性を持たせるために重要なのは、経営層による明確で継続的なメッセージ発信です。また、ただ発信するだけではいけません。「そのメッセージをスタッフ1人1人に染み込ませるにどうするのか」までを考え実践しなければ、絵に描いた餅です。
またスタッフ側も、このメッセージをしっかりと汲み取る姿勢が重要です。
このような意識づけにより、商品開発やプロモーションなど、全てにおいて一貫性が出て顧客のブランドイメージに繋がります。
ブランド戦略に一貫性を持たせることは、優れたカスタマーエクスペリエンスにも繋がるのです。
プライバシー
個人情報の取り扱いは厳しくなってきています。
以前は個人情報保護法の対象は、「5000件を超える個人情報を保有する事業者のみ」でしたが、2017年からはこの5000件の要件が撤廃されました。
つまり、すべての企業が対象です。
そのため、難しい領域ではありますが必ず知っておくべき部分です。
特にデジタル分野では見えないところで様々なデータが飛び交っているため、注意が必要です。
ここでは、プライバシーの観点から規制が厳しくなっているcookieというものと、それに伴う今後の企業の対応について解説します。
広告に追いかけられる私たち
あなたはこんな経験をしたことはありませんか?
ネット検索した後、検索した話題に関連する広告がSNSやサイトのバナーに出てきた。
このようなことが起こるのは、あなたがWebを使っている間の行動が追跡され、それを基にあなたの興味に沿った広告が送られているからです。
このときに使われている技術の1つが、クッキー(cookie)です。
cookieって何?
cookieは、ユーザーがあるサイトを訪問した時にユーザーの端末(ブラウザ)にデータを保存させる仕組みです。たとえばネットショップやSNSでは、訪問するたびに毎回IDなどを入力していては手間がかかります。
そのため、IDなどをユーザーの端末(ブラウザ)に保存しておくことで、次回アクセスした時に入力の手間を省くことが出来るようになります。この時に使われるのがcookieです。
ログインを簡単にするなど、cookieはユーザーにとって便利な反面、行動の追跡にも使われています。
ファーストパーティcookieとサードパーティcookie
cookieにはファーストパーティcookieとサードパーティcookieがあります。
ファーストパーティは「訪れているサイト・サービスが発行するもの」、サードパーティは「訪れているサイト・サービス以外(第三者)が発行するもの」です。
まず、ファーストパーティcookieについて見てみましょう。
①ユーザーXがサイトAを訪問
②サイトAはユーザーXの端末(ブラウザ)にcookie(ID※: abc123)を発行
※ここでのIDとは、ユーザーがログイン画面で入力するようなIDではなく、サイト側がユーザー(ブラウザ)に割り当てるセッションIDと呼ばれるものです。
この仕組みにより、例えばAmazonなどのECサイトでは、以前検索した商品と関連する商品が表示されます。
では、サードパーティcookieとはどんなものでしょうか。
細かな流れは読み飛ばして頂いて構いません。重要なのは、ユーザーの意図しないところで追跡され、情報を抜き取られているということです。
ユーザーXは「サイトAを訪れているだけ」と思っているのに、全く違う外部の事業者にcookieを保存させられ、サイトA以外でもどんなサイトでどんな情報を見ているのかなど、様々なデータを収集されるのです。
①ユーザーXが広告事業者と契約しているサイトAを閲覧。
②サイトAに設置されたタグが発火し訪問者が来たことを事業者のサーバーが認識。
③事業者はユーザーXのブラウザにcookie(ID:def456)を保存。
④事業者と契約しているサイトBをユーザーXが訪問。
⑤ユーザー側(ブラウザ)に保存されているcookie情報から、事業者はユーザーX(ID:def456として認識)がサイトBを訪れたことを認識。
様々なサイトでの行動を結びつけることで、ユーザーの属性や行動、興味・関心(年齢、性別、閲覧したサイト、購入した商品、年収など)が詳細にわかり、それに合わせた広告を配信するのです。
正直、気持ち悪いですよね。
これまでは個人情報は「取得した企業のもの」という風潮が強かったためにこのような仕組みが許されていました。また、テクノロジーの進化に法律が追いついていなかった面もあるでしょう。
しかし、最近では個人情報の取り扱いを厳しくしていく流れが強まっています。
個人情報保護に関して厳しい海外に目を向けると、EUでは2018年5月にGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)という法律や、カリフォルニアでは2020年1月にCCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)という法律が施行されました。
詳細は省きますが、ざっくり言うとGDPRは「個人データを使用する場合は事前にユーザーの許諾を得ないといけませんよ」、CCPAは「事前のユーザーの許諾は必須ではないけど、ユーザーからの要求があれば情報を開示してくださいね」というものです。(ものすごくざっくりなので興味がある方は調べてみてください)
日本はと言うと、2020年6月に「改正個人情報保護法」が公布されました。(公布後2年以内に施行予定)
改正内容の一部にはこのようなものがあります。
・漏洩などが発覚した場合には個人情報保護委員会への報告、および本人への通知が義務化される。
・データの不正利用に対する罰金がこれまでは個人・法人共に50万円だったものが、法人では最大1億円になる。
こういったプライバシーを取り巻く流れを受けて、個人データを承諾なしに使ってきたサードパーティcookieは使えなくなります。
Googleは2020年1月にChromeブラウザでのサードパーティクッキーのサポートを2年以内に完全に廃止する」と発表しています。
またAppleは、2017年にはサードパーティcookieを制限しはじめ、2020年3月にはサードパーティcookieを完全にブロックしました。
サードパーティcookie廃止で大きな影響を受けるのは、サードパーティcookie技術を使っている広告サービスです。
もし今何らかの広告サービスを使っているのであれば、そこで使われている技術がファーストパーティなのか、サードパーティなのか、運営会社に実際に問い合わせてみるといいでしょう。
cookie規制で企業はどうすべき?
cookie規制の動きに合わせて、Googleではサードパーティcookieに代わる「プライバシーサンドボックス」というものを開発中であったり、日本では個人がデータを預ける「情報銀行」という事業が始まっていたりという流れがありますが、まだ手探り中であることは事実です。
こういった現状から、マーケティングでの個人データ収集・利用について現時点で言えることは以下の2つです。
①ユーザーと直接的にデータをやり取りしているサービスに広告を出す
②自社でユーザーデータを取得・蓄積し利用する
要は、すでに膨大なデータを持っているサービスを使うか、自社でデータを作り上げて利用するかということです。
①ユーザーと直接的にデータをやり取りしているサービスに広告を出す
「ユーザーと直接的にデータをやり取りする」とはつまり、ファーストパーティデータを抱えているということです。
FacebookやGoogle、Amazonなどの巨大プラットフォームは膨大な数のユーザーからファーストパーティデータを収集しているため、サードパーティcookie廃止の影響を受けにくいです。
また、最初に出てきた「北欧、暮らしの道具店」も、プラットフォームとしてサイト内で記事広告の配信などを行っています。
このように、膨大なファーストパーティデータを抱えているプラットフォームに広告を出稿することは、プライバシー問題の影響を受けにくいです。
②自社でユーザーデータを取得し蓄積し利用する
外部データの利用に制限がかかるのであれば、自社でデータを収集、蓄積していくのも有力な手段です。
自社で収集できるデータには、登録フォームのデータやWebアンケート、購入履歴、アクセスデータなど色々なものがあります。
それらのデータから顧客を分類し、各顧客層に合った情報を提供することも出来ます。
自社データを収集する際には、個人情報保護法など関連法案の動向を十分に把握しておきましょう。
セキュリティ
セキュリティ対策が必要なのは大企業だけではありません。
中小企業でも、直接の被害を受けるだけでなく自社サイトの脆弱性を利用して第三者への攻撃の踏み台に使われる可能性もあります。
また、Webサイト制作の委託先の不備による個人情報流出によって、委託元に被害者1人当たり3万5千円の賠償命令が出されたという判例もあります。(過去最高の賠償金となったTBCの情報流出)
そして、セキュリティリスクは年々増加しています。
下の図は、警視庁が2020年3月に公表したインターネットにおける1つのIPアドレス当たりの1日の不審なアクセスの件数です。
4年で6倍近い件数に増加しています。
セキュリティ対策には様々なものがありますが、ここではWebサイトのセキュリティ対策の一部であるHTTPS化とWAFについて解説します。
難しく感じるかもしれませんが、まずは「セキュリティ対策にはどんなものがあるのか」だけでも知っておきましょう。
HTTPS化
Webサイトのアドレスは、「https://」もしくは「https://」で始まります。
このうちhttpsは、「Hypertext Transfer Protocol Secure」の略で、簡単にいうと「データを暗号化してやりとりしますよ」というものです。
HTTPSによってネット上でやりとりされるデータ(個人情報やクレジットカード情報、ID、パスワードなども含む)が暗号化されるため、第三者からのデータの盗聴、改ざんを防ぐことが出来ます。
反対にHTTPでは、第三者によりデータののぞき見や改ざんのリスクがあるのです。
このようなセキュリティ上のメリットから、検索エンジン最大手のGoogleもHTTPSを推奨しています。また、GoogleはサイトがHTTPSに対応していることを検索順位の目安の1つとすることも明言しています。
HTTPS対応のサイトでは、アドレスバーに安全を表す「鍵マーク」が表示されますが、HTTPのサイトでは「保護されていない通信」と表示され、ユーザーからの信頼感も変わってきますね。
最近作られたサイトはほとんどがHTTPSだと思いますが、いまだにHTTPのサイトも見かけます。運用中のサイトのアドレスを確認して、もしHTTPであれば早めにHTTPS化を検討しましょう。
ここで、HTTPS化について1つ注意点があります。
HTTPS化する際にはSSLサーバー証明書というものを発行するのですが、この証明書には有効期限があります。
Appleは、2020年9月1日以降に発行されたサーバー証明書で有効期限が398日を超えるものは、サイト自体が表示されなくなる可能性があると公表しています。
Googleも具体的な日にちは決まっていないものの、有効期限の短縮化を予定しています。
WAF
WAFとは「Web Application Firewall」の略で、サーバーへの不正なアクセス・攻撃を防いでくれるシステムです。
WAFは通常のユーザーのアクセスは通しますが、悪意のあるユーザーがサーバーに不正アクセスや攻撃を仕掛けてくると、それを検知して通信をブロックします。
ここではHTTPSとWAFの2つに触れましたが、Webサイトだけでも他に様々なセキュリティ対策があります。
まずはどんなものがあるのかだけでも知っておきましょう。
もし制作や管理を外部に委託する場合には、その業者に「どんなセキュリティ対策をしているのか」を尋ねてみると良いでしょう。その時にいかにわかりやすく親身になって説明してもらえるかも、業者選びの基準の1つになるでしょう。
Webサイトにおけるセキュリティ対策について知りたい方は、こちらもご覧ください。
情報処理推進機構:
安全なウェブサイトの運用管理に向けての20カ条
安全なウェブサイトの作り方(制作者向け)
オウンドメディア
オウンドメディアとは、自社で運営するメディアです。Webサイトやブログ、SNSなどを指します。
人はある対象に繰り返し接していると、(もともと興味のなかったものでも)好感を持つようになると言われています。
これをザイオンス効果(単純接触効果)といいますが、複数のオウンドメディアを通して顧客と複数の接点を作ることで、ザイオンス効果が高まることが期待できます。
ただし、初めからあまり多くのメディアを運営しようとすると労力がかかるため、各サービスの特徴・ユーザー層を踏まえた上で、まずは1つ~2つを運用し、実際の効果とコストのバランスを見ていくのがいいでしょう。
下図は日本で有名なサービスの特徴です。
オウンドメディア運営で重要なポイントは以下です。
①積極的なコミュニケーション
②一貫性を出す
③コンテンツという資産を作る(SEO対策も重要)
④自社データを収集する
①積極的なコミュニケーション
特にSNSについては、顧客と積極的なコミュニケーションをとることは重要です。
SNSというと、炎上のリスクを恐れて運用をためらっているケースもあるようですが、あらかじめ投稿についてのガイドラインを作っておいたり、投稿前に複数人でチェックする体制を作っておくなどの対策をすることで、炎上のリスクはかなり抑えられるでしょう。
ここで、実際の企業アカウントを見てみましょう。
これはSHARPのTwitterアカウントです。カスタマーサポートとして顧客からの質問に対応しています。
こういったSNSでブランドとポジティブな経験をした顧客の71%は、そのブランドを友人や家族に薦める可能性があるというデータもあります。
また、積極的なコミュニケーションはSNSのシステムの面からも求められています。
それぞれのSNSは、ユーザーの時間を自分のサービスに出来るだけ費やして欲しいと考えています。(そうすればサービスの価値が上がり、広告収益も上がります)
したがって、サービス自体をユーザーが“ハマる空間”にしてユーザーを囲い込みたいのです。
この囲い込みに必要な要素が、コミュニケーションです。
SNSはそれぞれの基準でユーザーの投稿をランク付けし、表示の優先順位をつけています。
例えばTwitterでは、リツイートや投稿のクリック、お気に入りへの登録などのやりとりが基準の一部となっています。
フォロワーが増えてくればフォロワーに質問を投げかけたり、アンケートをとって参加を促すなどしてより多くの人を巻き込むことで、投稿が多くの人の目に留まるようになります。
ターゲット層と良質なコミュニケーションをすることで、SNSでの存在感を高めることが出来るのです。
SNS運用について知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
②一貫性を出す
オウンドメディアではターゲット層に見てもらうことが目的のため、ターゲット層が興味を持っている領域に特化したコンテンツを発信していきます。
ブランド認知の項目でありましたが、一貫性は重要なポイントです。
最初に出てきた「北欧、くらしの道具店」は、「日常(KURASHI)のなかに、ひとさじの非日常(Trips)を」というコンセプトのもと、複数のオウンドメディアで一貫性したコンテンツを届けています。
オウンドメディアは一貫性を出すことで独自の世界観を作りやすく、ファンを作るのに適しています。
③コンテンツという資産を作る(SEO対策も重要)
オウンドメディアのポイント、3つ目は「コンテンツという資産を作る」です。
オウンドメディアの中心となる「SNS」と「Webサイト・ブログ」では、性質が異なります。
SNSは情報が流れていく「フロー型」のメディアであるのに対し、Webサイト・ブログはコンテンツが溜まっていく「ストック型」のメディアです。
フロー型メディアは、情報のリアルタイム性と拡散性に優れていますが、すぐに見られなくなるという特徴があります。
反対にストック型メディアは、リアルタイム性と拡散性の面ではフロー型に劣りますが、時間が経過してもGoogleなどの検索エンジンからのユーザーの流入が見込めるというメリットがあります。
したがって、ストック型のメディアではコンテンツが後々も集客してくれる資産になります。
それぞれのメリットを活用して情報発信することが大切です。
ここではストック型メディアについてお話しします。
ストック型メディアでは、検索エンジンで上位表示されるための施策が重要になります。
その施策が、SEO対策(Search Engine Optimization)です。
ネット上でのコンテンツが膨大になり競合が増えていることや、Googleによる検索エンジンの仕様変更などによって、SEO対策は複雑になってきています。
しかし、ポイントを抑えることで上位表示されることは可能です。
そのポイントの1つが、ロングテールキーワードです。
ロングテールキーワードの反対がビッグキーワードですが、たとえば「英会話」のように検索数が多い単一のキーワードのことを言います。
ビッグキーワードは競合が多いため上位表示の難易度は上がります。
これに対しロングテールキーワードは検索数が少ないキーワードで、競合サイトが少ないのが特徴です。
多くの場合、ロングテールキーワードは複数の語句になる傾向があります。
例えば、「英会話 ネイティブ 福岡市博多区」などです。
ロングテールキーワードとビッグキーワードでの成果を比較すると、ロングテールキーワードの方がコンバージョン率が2.5倍高いというデータがあります。
コンバージョン率:サイトへの訪問数に対して、購入・問い合わせ・資料請求などの実際の成果に繋がった割合
「英会話」と「英会話 ネイティブ 福岡市博多区」の検索では、どちらが英会話を受けたいと思う人の検索かは明らかですね。
また、ロングテールキーワードは検索数が少ないキーワードですが、全てのネット検索のうち実に70%がロングテールキーワードでの検索なのです。
つまり、ネット検索の大多数がロングテールキーワードでの検索であり、そこで上位表示されれば成果に繋がりやすいということです。
SEO対策には、このようなキーワード選定だけでなくさまざまな要素があります。
現在Googleが検索エンジンのシェアのほとんどを占めているため、Googleの方針を理解することは必須です。
※2020年8月現在、GoogleとYahoo!が検索エンジンの90%以上を占めています(statcounterより) 。そしてYahoo!は2011年からGoogleの検索技術を使っているため、実質Googleがシェアの90%以上を占めています。
また、SEO対策には色々なテクニックがありますが、小手先のテクニックばかりではいけません。肝心の顧客が満足できる、魅力を感じるコンテンツを提供出来なければ人は離れていきます。
コンテンツ作りでは、「人を満足させること」と、「SEO対策で検索エンジンに見つけてもらいやすくすること」という2点を意識することが重要です。
SEO対策について詳しく知りたい方はこちらの記事がおススメです。
SEO対策とは?上位表示の施策を完全解説④自社データを収集する
オウンドメディアのポイント、4つ目は「自社データを収集する」です。
オウンドメディアでは、そこに集まってくるデータをすべて自社データとして蓄積・分析することが出来ます。
プライバシーの項目であったように、第三者が収集したデータ(サードパーティデータ)の活用は今後ますます厳しくなっていくため、自社データ(ファーストパーティデータ)の収集は重要になってきます。
データ収集で重要なのは、「何のために、どんなデータを集めるのか」を明確にしておくことです。
とりあえず集めておこうと思っても、いざ運用するときにデータの整理が難しかったり、不足するデータも出てくる可能性があります。
適切にデータを収集することで、ニーズの把握や顧客の分類が出来るようなり、顧客に応じたアプローチが可能となります。
パーソナライズ
マーケティングにおけるパーソナライズとは、顧客一人一人の興味や関心に合わせて情報やサービスを提供することです。
パーソナライズの目的は以下です。
・顧客一人一人との繋がりを深めるため
・顧客層によって異なるニーズに対応するため
では、どうやってパーソナライズするのでしょうか。
今では様々なツールや方法がありますが、ここでは簡単に「手動」と「自動」の2つで考えてみたいと思います。
カスタマーサポートを例に挙げると、従来からのカスタマーサポートは電話や対面など、人が対応するものでした。いわば「手動」によるものです。
それに対して「自動」でのカスタマーサポートとしていま注目されているのは、チャットボットです。
チャットボットには、顧客の問い合わせに対しあらかじめ決めておいたパターンを回答させる「ルールベース(シナリオ)型」と、大量のデータを元に学習したパターンを元に回答させる「機械学習型」のものがあります。
では、手動と自動のどちらがいいのでしょうか。
それは、ターゲット層、商品・サービスの特徴、会社の事業規模、リソースなどによって異なります。
極端な例ですが、問い合わせが1日数件なのにチャットボットを導入しても費用がかさむだけですし、高齢者がターゲットの商品のサポートにチャットボットを導入しても、利用する人は少ないでしょう。
また、チャットボットはルールベース型だと用意していたパターンから外れた質問には対応出来なかったり、機械学習型だと学習させるための大量のデータが必要、コストが高額になるといった面があります。
反対に多くの顧客を抱えており、導入することでコストカットやカスタマーエクスペリエンスの向上に繋がるのであれば、メリットは大きいでしょう。
今は、ビジネスにおいてパーソナライズを自動化するための様々なツールがあります。気になる方は調べてみてください。
・マーケティング・オートメーション(MA)ツール
顧客を引きつけるためのツールで、見込み顧客の獲得から育成、顧客の絞り込みまでを行う。
・セールス・フォース・オートメーション(SFA)ツール
営業活動を効率化するためのツールで、顧客との商談状況などのデータを把握し、有効活用するために使う。
・カスタマー・リレーションシップ・マネージメント(CRM)ツール
既存顧客の情報を管理し、関係維持、向上を目的に顧客に応じたアプローチを行う。
次は、手動でのパーソナライズの例としてナイキを見てみましょう。
ナイキは誰もが知るスポーツブランドですが、今や様々なテック企業を買収し、デジタルを活用した顧客体験のパーソナライズに力を入れています。
しかし、デジタル化ばかりでなく、手動でのパーソナライズにも力を入れています。
その取り組みの1つが、Team NikeというTwitterアカウントです。ナイキのカスタマーサポート用のアカウントで、担当スタッフが顧客一人一人の問い合わせに返信しています。
下のケースでは、商品が配達予定日を過ぎても到着しないというツイートに対し、Team Nikeはダイレクトメッセージで詳細を教えて欲しいと返信しています。
ここで見てきたように、顧客体験をパーソナライズするための手段は様々です。
もしかすると近い将来、ほとんどのやりとりが自動化出来るかもしれません。
ただし、現時点では自動と手動をケースに応じて使い分けていく必要があります。
自動か手動かは手段であって、質の高い顧客体験を提供出来れば、顧客にとってはどちらでもいいのです。
最近ではパーソナライズというと「AI」や「自動化」といったワードを中心に語られがちです。しかし、手動と自動のどちらを採用するかは、ケースに応じて判断した方が良いでしょう。
「いま求められていること」とは
デジタル化が進んでも、ビジネスで相手にしているがヒトであることに変わりはありません。
デジタルツールで顧客ごとに細かなアプローチが出来るようになっているからこそ、1人1人の顧客が「何を考えているのか」「どう感じるのか」を理解することがより重要になっています。
つまり、今のデジタルマーケティングにおいては「顧客視点」や「人間理解」がますます求められているのです。
その上で、デジタルという道具はあなたの強力な武器になります。
TODOKELではそんなことを考えながら、みなさんに求められていることを提供していきたいと思います。
「北欧、暮らしの道具店」はもともと兄妹で立ち上げたショップですが、良質な体験を提供することで月間1600万※1ものPV(ページビュー:ページを見られた回数)、2億9千億円の純利益※2となっています。
※1:2020年3月現在 ※2:2019年7月期